このところ相場が好調で、投資信託の基準価額が高い水準になっています。「今のうちに現金化しておいた方がいい?」と迷う人が増える局面です。この記事は必要額だけ/分割で/積立は止めないという現実的なやり方を、新NISAの最新ルール(非課税は無期限・売却分は翌年以降に簿価ベースで枠が戻る)を前提に、判断テンプレとしてまとめました(根拠:金融庁NISA特設サイト)。
松井証券の始め方|新NISAと手数料の要点・口座開設・商品選びまで【保存版】
評価額が増えるとつい現金化したくなるワケ
評価額が増えると「今なら利益を現金で受け取れる」という実感が強まり、売りたい気持ちが自然と高まります。
一方で、あとから上がるかもしれないという期待も残り、判断がブレやすくなります。
このタイミングで迷いを減らすコツは、感情ではなくルールで決めること。
使い道と期限がはっきりした必要額だけ、回数を分けて売り、積立は止めない。この3点を先に決めておけば、短期の値動きに振り回されにくくなります。
気持ちはよくわかる。増えた今こそ利益を確定したくなるよね
でも全部売ったら、また上がったときに取り逃しそうで怖い…
結論:売るなら「必要額だけ」「分割で」「積立は止めない」
もし売却を考えるなら、すべてを手放すのではなく、まずは本当に必要な金額だけに絞ることが大切です。
その金額を一度にまとめて売るのではなく、数回に分けて取り崩すことで、短期的な値動きに左右されにくくなります。
そして、積立投資自体は止めずに継続することで、将来の資産形成のリズムを崩さずにすみます。
このやり方なら、増えた利益を一部は現金として手元に残しつつ、長期的な資産づくりの流れも守ることができます。
おさらい!新NISAのルール
- 年間投資枠:合計360万円(つみたて120万円+成長240万円)
- 生涯非課税保有限度額:合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)
- 非課税期間:無期限
- 売却後の枠:当年の年間枠は戻らないが、翌年以降に売却分(簿価)が生涯枠として戻る
(根拠:金融庁の制度解説、金融庁スライド資料)
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売却判断3チェック
売る前に、まずは「何に、いつ使うのか」を言葉にしてみましょう。
旅行や教育費のように使い道と期限がはっきりしていれば、その金額は“売って用意する対象”になりやすいです。逆に「特に予定はないけど不安だから」という場合は、いったん保留が無難です。
次に、「手元のお金や別口座でまかなえないか」を落ち着いて確認します。
生活防衛資金は残せているか、ボーナスや臨時収入の見込みはないか。ここで代替案が見つかれば、今すぐ売る必要は薄れます。もし足りないなら、その不足分だけを売却対象にします。
最後に、「売っても積立は続けられるか」を自分に聞いてみてください。
積立を止めてしまうと、せっかく整えた“増やすリズム”が途切れてしまいます。金額を少し調整してでも続けられるなら、将来の増え方を守りながら今の不安も和らげられます。
- 用途と期限が日付で明確か
- 手元資金や別口座だけで賄えないか
- 売ったあとも積立を続けられるか
Yesが2つ以上 → 必要額だけを分割売却
Yesが1つ以下 → 売らない/代替資金を先に検討(ボーナス・他口座など)
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分割売却のやり方
いくら売ればいいのかを決める目安
売却を考えるときに大事なのは「全部売るかどうか」ではなく、「いくらなら安心できるか」を決めることです。
まず、これから必要になる支出を思い浮かべます。教育費や旅行資金、引っ越し費用などです。
そこから生活防衛資金(生活費の半年〜1年分)をきちんと残し、さらに別口座の預貯金も考慮したうえで、足りない分だけを売却の対象にします。
たとえば、3か月後に120万円必要で、手元に70万円あるなら、不足する50万円が売却額の目安になります。
このように「必要額 − 手元資金」で考えると、冷静に判断しやすくなります。
回数とタイミングの決め方
売る回数とタイミングは、「いつまでに、いくら必要か」から逆算して決めると迷いが減ります。
支払期限をカレンダーに書いて、そこから30〜90日前に向けて、数回に分けて取り崩すのが目安です。
まずは回数。忙しさや性格に合わせて選びます。
- 3回プラン(シンプル):4週間おきに3回。例)必要額60万円 → 20万円×3回
- 6回プラン(より慎重):2週間おきに6回。例)必要額60万円 → 10万円×6回
タイミングは、支払期限をゴールにして、そこから手前に均等配置します。
たとえば、3か月後(約90日後)に120万円が必要なら、
- 3回プラン:40万円×3回(90日前・60日前・30日前の目安)
- 6回プラン:20万円×6回(90日前から2週間ごと)
という具合に、無理のない間隔で並べます。
実務上のコツも押さえておきましょう。
- 約定日と入金日:投信は「注文日=入金日」ではありません。金融機関ごとに約定日→受渡日のラグがあるので、数日の余裕を持ってスケジュールを組みます。
- 曜日のクセ:連休・週末をまたぐと受渡がずれることがあります。平日→平日で完結する並びにすると安心です。
- 積立日は触らない:毎月の積立はそのまま継続。売却日と被っても問題はありませんが、気になる場合は売却の方を前後にずらすだけでOK。
- 心のゆとり枠:相場が急に下がって不安なときは、1回だけ見送る判断をしても大丈夫。その分は翌スケジュールで微調整します。
なぜ売却を分けるのか?
1. 短期の値動きリスクを減らすため
投資信託の基準価額は毎日変動します。
一度にまとめて売ると「売った翌日にもっと上がった」「逆に一番高い日に売れなかった」など、運に左右されやすくなります。
分けて売れば、平均的な価格で売却できる=損をする可能性を減らせるのです。
これは積立で買うときの「ドルコスト平均法」と同じ考え方です。
2. 心理的な安心感を持つため
一度に全額を売ると「やっぱり早まったかも」「売らなければもっと増えていたかも」と後悔しやすいです。
数回に分けて売れば、「少なくとも一部は良いタイミングで売れた」と思えるので、精神的なブレを抑えやすいです。
3. 必要額を柔軟に調整できるため
ライフイベントなどで資金が必要なときも、「思ったより出費が少なかった」「他の収入が入った」などの変化があります。
分けて売れば、途中で売却額を調整できる余地が残ります。
一気に売ると「運」と「気持ち」に左右されやすいんだ
分けて売れば、平均的な値で売れるし、気持ちも落ち着くんだね
積立は止めない
売却が必要になっても、毎月の積立そのものは続けるのが基本です。
積立を止めてしまうと、せっかく作ってきた“増やすリズム”が途切れ、再開のきっかけも失いやすくなります。相場は上がったり下がったりを繰り返すので、積立を続けておけば、高い日も安い日も平均化しながらコツコツ買い進めていけます。
もし家計が一時的にきついなら、金額を小さくして続けるだけでも十分効果があります。
たとえば月3万円を一時的に月1万円へ。余裕が戻ったらまた増やせばOK。重要なのは「ゼロにしない」ことです。
売却と積立は両立できます。
売却で必要な現金を確保しつつ、積立で将来のタネをまき続ける――この二本立てなら、今の安心と将来の育ちを同時にねらえます。
(制度の根拠:金融庁スライド資料)
実際に基準価額が高いときに一部を売却してみた話
2024年末から2025年にかけて、相場が好調で私の積立NISA口座の評価額も大きく伸びました。
特に米国株インデックス投信の基準価額が上昇し、含み益が30万円以上プラスに。
正直、「今すぐ全部売れば利益を確定できる」と何度も思いました。
ただ、非課税のメリットを考えると全部売るのはもったいない気もして、最終的に必要な10万円だけを2回に分けて売却しました。
結果的に手元資金の安心感が増し、残りの投資分はそのまま運用を続けることができました。
翌年には売却分の簿価が生涯枠に戻り、積立もスムーズに再開できました。
よくある誤解と落とし穴
「増えた今のうちに全部売れば安心」という考えは、短期的な気持ちを落ち着かせてくれますが、その後にまた相場が上がったとき“置いていかれた感”が強くなりやすいです。大切なのは、安心を得るためにどれだけ現金にするかを決めることであって、すべてを手放すことではありません。
もう一つの落とし穴は、「予定のない利確」です。使い道や期限がはっきりしていないのに、とりあえず利益を確定すると、その瞬間は気持ちが軽くなりますが、のちほど「必要資金に回せばよかった」「積立を伸ばせたかも」と迷いが残りがち。目的と期限を先に言葉にしてから動くと、後悔が減ります。
最後は、売却をきっかけに積立まで止めてしまうパターン。これが一番もったいない。金額は小さくしても構いません。ゼロにせず続けておけば、高い日も安い日も平均して買い進められます。
ぜんぶ売る勇気より、必要額だけ売る落ち着きを
目的と期限を先に決めれば、ブレずに動けそう
「今すぐ売るべき?」を数式でざっくり判断
迷ったら、感情ではなく簡単な計算で整えてみましょう。
まずは売る総額の目安。
売却目安=必要な支出 − 手元の現金・別口座の預貯金 − 生活防衛資金
例)3か月後に120万円必要、手元に70万円、生活防衛資金は別で確保 → 120−70=50万円が「売って用意する候補」です。
つぎに回数。
1回あたりの金額=売却目安 ÷ 回数
例)50万円を3回なら約16.7万円、6回なら約8.4万円。支払期限から30〜90日前に向けて等間隔で並べると、短期の値動きに左右されにくくなります。
最後に、積立は続けられる金額に微調整。月3万円がきつければ、いったん2万円や1万円に。ただしゼロにはしない、が合言葉です。
制度に関する補足
新NISAでは、非課税で保有できる期間は無期限です。売却しても、その年の年間投資枠は増えませんが、翌年以降に売却した分(取得額ベース)が生涯の非課税枠として使えるように戻ります。
つまり、「今どうしても必要な分だけ現金化」「来年以降に計画へ戻す」という動きが取りやすい制度設計になっています。制度の細かいルールは公式の最新情報で確認しつつ(例:金融庁のNISA特設サイト)、記事では**“必要額だけ・分割・積立継続”**の型を守ることを第一にしましょう。
(根拠:金融庁NISA特設サイト)
まとめ:基準価額が高い今、ちょうどいい利確は「必要額だけを分割」で
評価額が増えると、利益を形にしたくなるのは自然な反応です。ただ、将来の増え方まで止めないためには、必要額だけを、回数を分けて、積立は続ける——この3点セットがいちばん現実的。
使い道と期限を言葉にする → 売る総額を計算する → 回数と日程を決める → 積立は細くても続ける。
この順番で組み立てれば、今の安心と将来の育ちを同時にねらえます。
ちょうどいい利確」は、必要額だけ・分割・積立は継続
うん、やることがシンプルだから、続けられそう
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投資ディスクレーマー
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・売買を勧誘するものではありません。投資に関する最終決定はご自身の判断にて行い、必要に応じて専門家へご相談ください。相場状況や制度は変更される可能性があり、掲載内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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